小さくない波


 
「遅くなっちゃったなぁ・・・。」
青春学園テニス部3年、不二周助は街中で走っていた。
今日は友人の河村隆と出かける約束だった。
普段は温厚で少し内気な友人からの珍しい誘いだった。

それに、河村は不二にとって片想いの相手。
不二はこの日を本当に楽しみにしていて、昨夜はなかなか寝付けなかったくらいで・・・。

で、自分らしくなくしっかりと寝坊してしまった。

「せっかく河村から誘ってくれたのに。ついてないな・・・。」


しばらく走って、やっと約束の場所が近くなってきた。
10分の遅刻…どこかの堅物の同級生だったらグラウンド何十週か言い渡されるだろう。
でも、今日の相手は河村。

(河村は優しいから、怒らないだろうけど。)


いつも通り少しはにかんだ優しい笑みで迎えてくれるだろうな。

不二は確信に近い予感を持って足を早めた。


ようやく前方に見知った、中学生にしてはかなり大きな姿を見つける。


「あ、河む・・・・・・・。」


でも、一人ではなかった。

河村のそばにはボブカットの可愛い女の子。



不二は愕然とする。




河村は不二に気づかず、楽しそうに女の子と話をする。
その様子は、どこか恋人同士のようにも見えて。



たまらない気持ちになる。





気がついてよ



そんな顔僕以外に見せないでよ

河村・・・・。








「河村!!」
気がついた時にはもう彼の名前を呼んでいた。




「あ、不二!」
ふっといつもの笑顔を向けてくれた。

「ごめん、遅くなっちゃって。」

極力表情を変えないように、いつも通りの顔で不二も答える。


「あ、友達?じゃあ私も行くわ。」
河村の傍にいた女の子は邪魔だから、と去っていこうとした。

「じゃあね、隆くん!」
「うん、またね。多加絵さん。」



・・・隆くん・・・?



不二の心に波紋を残して女の子は去っていった。


「・・・可愛い子だね。・・・彼女とか?」

否定してほしくて、思いたくないことを言う。

「ま、まさか!」

顔を赤らめて否定する河村の姿に、少し安堵する。






「でも、そうなるといいかなーなんて、思ったこともあったけど。」





ドクン


「小さいころだけどね。」

「・・・・へえ、今は思ってないの?結構お似合いに見えたけど。」
そんな事思ってない。
君の隣に居るのは僕でなきゃ嫌だ。






「あはは、見かけはね。でもあのひとああ見えて30歳だよ?親戚のお姉さんなんだけど。」



「・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
30歳?


「じゅ・・・17,8にしか見えなかったけど・・・・。



「うん、自分でも言ってるもん。丁度新婚だから今気分的にも若いんじゃない?」

「新婚・・・?」


ぷ。


「あ・・・あはははははははっ!」


何だ。


そうなのか・・・。


「わ、笑っちゃわるいよ!!不二。」


「ごめん、なんでもないんだ。ちょっとね・・・。」


よかった。ホントによかった。


「ところで、遅れて悪かったね。どこに行く予定だったの?」
「あ、うん。この近くで海と魚の写真展やってるんだ。凄く綺麗だから、不二にも見せたいなって思って。行こう、すぐ近くだから。」


「・・・うん!」



不二の中の波は静けさを取り戻した。



(改めて気づいちゃったな。こんなに河村が好きだったなんて・・・。)
 

僕の中に残ったのは小さくない波。

嵐になったらどうしてくれるの?・・・責任とってよね。



ねえ、河村?




おまけ

 「あー、でも河村で良かった。手塚だったらすごく怒られてたよ。」
 「・・・それなんだけどね、不二・・・。」
 「何?」
 「実はその、手塚と大石とも現地集合で待ち合わせしてたんだ・・・けど。」
 「・・・・・・・・・・・・え?」



 翌日、朝からグラウンドを走らされている不二と河村の姿があったのは言うまでもない。

                                                       end.
 


 はい、テニプリ処女作、タカ不二です。
 女性は優紀さんでも良かったんですけど、結局結局オリキャラになってしまいました。
 まあちょとした中学生日記・・かな?
 
 内容のない話ですみませんです・・・。


戻る